それは、どこにでもある冬の日の出来事だった。少し熱があるな、と思ってから数時間。彩花さんの容体は急変した。意味不明な言動、突然の痙攣(けいれん)、そして意識混濁。救急車で運ばれた病院で下された診断は「インフルエンザ脳症」だった。
この病気は、インフルエンザウイルスへの感染をきっかけに、脳に急速かつ重篤な腫れが生じる急性脳症だ。特に乳幼児に多く、発症すると数時間単位で病状が進行する。一命を取り留めたとしても、重い後遺症が残る確率が極めて高い。彩花さんの家族にとって、平穏な日常が崩れ去るには、一日もかからなかった。