1987年に阪神タイガースへと加入したマット・キーオは、来日前から高い知名度を誇っていた。メジャーリーグのオークランド・アスレチックスで先発ローテーションを支え、オールスターゲームにも選出された名投手である。しかし、日本野球機構(NPB)の舞台に足を踏み入れた彼を待っていたのは、かつての威光だけで通用するほど甘くはない日本のストライクゾーンと、特有の粘り強い打撃スタイルだった。
キーオが他の助っ人投手と一線を画したのは、その圧倒的な順応性と緻密な投球術だ。力で押すメジャー流の投球法から速やかに脱却し、正確無比な制球力と低めに沈む変化球を主武器へと据え直した。打者の手元で微妙に変化するカットボールや、好機を打ち砕く絶妙なチェンジアップ。過酷な打者有利の状況にあっても、テンポよくゴロを打たせて取るスタイルを確立させたのだ。