物語の核心を担っていたのは、200年前に世界を滅亡の危機に陥れた三大冥王と、真祖アルカードをめぐる怨嗟の歴史だった。敵組織「御伽の国(フェアリーテイル)」の暗躍により復活したアルカードは、単なる破壊神ではなく、人間との共存に絶望した哀しい怪物の成れの果てとして描写される。
アカーシャは自らをアルカードの体内に同化させることで怪物の暴走を食い止め、自らの娘を守るために表萌香という「母の愛の擬似人格」をロザリオに遺した。決戦の終盤、アカーシャとアルカードが互いを許し合いながら崩壊していくシーンは、血塗られたダークファンタジーの頂点とも言うべき崇高さを誇る。
表萌香の消滅後、裏萌香は髪をかつての表萌香のように短く切り、母の面影と優しさをその心に受け継いだ。消えた表萌香は決して無駄死にではなく、裏萌香の中で永遠に生き続けるという演出は、池田晃久の緻密な心理描写の賜物だろう。