小林カツ代レシピの真骨頂といえば、何と言っても水なし肉じゃがです。従来の和食における肉じゃがは「出汁を張り、落とし蓋をして20分〜30分コトコト煮る」というのが教科書通りの手順でした。しかしカツ代流は、その常識を根底から覆します。 鍋にごま油を熱して牛肉と玉ねぎ、じゃがいもを強火で手早く炒め、調味料(醤油・酒・みりん・砂糖など)を加えたら、水を1滴も加えずにフタをして強火〜中火で一気に蒸し煮にする。調理時間は正味10分。この驚異的な時短を可能にしているのが、食材の水分を呼び出す調味料の黄金比と、ごま油による熱効率の向上です。
玉ねぎと牛肉から染み出た濃厚なエキスが蒸気となって鍋の中を循環し、短時間でじゃがいもの芯まで浸透します。煮崩れを起こす前に火を止めて余熱で味を含ませるため、形は美しくエッジが立ち、中はねっとりホクホクに仕上がるのです。
また、もうひとつの看板メニューである豚の生姜焼きにも、失敗を防ぐ確固たるロジックが存在します。多くの人が陥りがちな「肉がパサつく」「タレが絡まない」という悩みに対し、カツ代流は肉をあらかじめタレに漬け込みません。小麦粉を薄くはたいて旨味と肉汁を閉じ込めてから焼き、仕上げにおろし生姜・醤油・みりん・酒を「同量〜絶妙な比率」で合わせたタレをジャッと回しかけて絡めるだけ。肉の柔らかさを保ちつつ、タレにとろみがついてご飯が進む極上の仕立てとなります。