一般の民間企業や他の公務員と異なり、公立学校の教員には原則として「時間外勤務手当(残業代)」が支給されない。この独特な給与形態の根拠となっているのが、前述の給特法である。この法律により、教員には時間外手当が支給されない代わりに、一律で教職調整額が給与に上乗せされる仕組みが採用されてきた。
しかし、半世紀前の制定当時に想定されていた月4時間程度の時間外労働と、現在の教育現場の実態には天と地ほどの乖離がある。授業準備、テストの採点、児童指導、保護者対応、さらには膨大な行政書類の作成や部活動の指導に至るまで、教員の業務は多岐にわたる。月間の時間外労働が80時間を超える「過労死ライン」に達する教員も少なくない。
労働時間に応じた対価が支払われないこの構造は、現場から「定額働かせ放題」と強い批判を浴び続けてきた。どれほど残業しても給与が変わらないという現行の制度は、学校現場における業務効率化や組織的な働き方改革を阻害する構造的な要因となっている。