日本野球機構(NPB)の歴史を振り返ると、エンブレムの変遷は日本の商業美術史そのものと言っていい。昭和の牧歌的な球団旗に見られた手書きの温もりから、平成のダイナミックな筆文字、そして令和のソリッドなミニマリズムへ。かつては子どものファン向けだった愛嬌あるマスコット主体のマークから、大人が日常着として誇れる洗練されたグラフィックへの転換が、各球団で一斉に進んだ。
メジャーリーグベースボール(MLB)に目を向けても同様だ。かつてのアナログ印刷やブラウン管テレビの解像度に最適化されていた複雑なレタリングは、デジタルスクリーン上での発色と視認性を極限まで高めた幾何学的プロポーションへと再構築された。線の太さにしてわずか数ピクセル、文字の交差角度にしてわずか1度の微細なアップデート。ファンが「違和感のない馴染み深さ」と「新しい時代の格好良さ」を同時に覚えるのは、こうしたデザイナーの執念によるものだ。