2026年の聖火リレーは、3月25日から7月23日の開会式まで計121日間にわたる過密な走行スケジュールで設計されていました。走行ルートは、東日本大震災からの「復興五輪」を象徴する東北3県(福島・岩手・宮城)をはじめ、日本全国の名所旧跡や世界遺産を巡る壮大な構想でした。
しかし、各地で変異株(デルタ株等)の感染が急拡大したことを受け、当初予定されていた公道走行の中止が相次ぎました。口火を切ったのは大阪府でした。吉村洋文知事の要請により、大阪市内の公道リレーは全面中止となり、万博記念公園内を周回する無観客開催へと変更を余儀なくされました。
以降、京都府、兵庫県、広島県、福岡県、そして開催地である東京都(島嶼部を除く)など、全日程の約半分近い地域で公道走行が見送られました。代替措置として導入されたのが、各日のゴール地点であるセレブレーション会場での点火式です。ランナーたちは観客のいないステージ上で、トーチからトーチへと火を繋ぐ「トーチキス」を行い、次の走者へと聖火を託しました。公道を走る高揚感は失われたものの、ランナー一人ひとりの想いを繋ぎ止める執念のオペレーションが展開されたのです。