昭和歌謡の歴史を塗り替えた『プレイバックPart2』の歌詞は、作詞家の阿木燿子さんが紡ぎ出した卓越したビジュアルセンスから誕生しました。当時、歌謡曲の歌詞に具体的な海外の高級車ブランド名をそのまま組み込むことは極めて異例の試みでした。
阿木さんが「ポルシェ」という言葉を選んだ最大の理由は、「緑の中を走り抜けてく」という情景に対比させる圧倒的な色彩のコントラストと、言葉が持つシャープなリズム感にありました。深緑のワインディングロードを、鮮烈な赤いスポーツカーがハイスピードで切り裂いていく情景描写。そこにポルシェという響きが持つスピード感とアグレッシブさが完璧に合致したのです。
さらに重要なのは、「真っ赤なポルシェ」というアイコンが象徴するメッセージ性です。それまでの歌謡曲に多かった「男性の後ろをついていく儚い女性像」を真っ向から覆し、自らの意志でアクセルを踏み込み、対等に男と対峙する自立した強い女性を鮮明に描き出しました。「坊や 軽く扱わないで」という決め台詞とともに、山口百恵という稀代の表現者を得て、時代を切り拓くアンセムとなったのです。