今年、東京・有楽町のシネマサロンを口切りにスタートした「日本映画黄金期名作選」において、満員の客席を最も熱狂させたのは、水上勉原作の『五番町夕霧楼』の4Kデジタルリマスター版だった。スクリーンに映し出された主人公・夕子の儚くも凄絶な生き様は、半世紀以上の時を超えてなお濃密な感情を放射している。
薄暗い客席で静かにスクリーンを見つめる若い観客たちの姿が目立つ。当時は高度経済成長の只中、映画館が人々の娯楽の中心だった時代だ。そこで一際異彩を放っていたのが、薄幸なヒロインの内面に潜む強い意志を見事に演じきった彼女の姿だった。粒子の粗い古いフィルムでは捉えきれなかった微妙な眼光の動きや、着物の裾が擦れる繊細な所作までが鮮明に蘇り、現代の映像作品にはない生々しいリアリティを突きつけてくる。