曲名となっている「サライ」とは、ペルシャ語で「宿」や「隊商宿(キャラバンサライ)」を意味する。砂漠を旅するキャラバンが羽を休め、新たな旅立ちへと向かう場所。谷村新司はこの言葉に、人が立ち返るべき「心の故郷」という意味を重ね合わせた。
歌詞に登場する「まぶた閉じれば 浮かぶ景色」や「動き始めた 汽車の窓」といった情景描写は、特定の土地を指しているわけではない。誰もが幼少期に過ごした町、見送ってくれた親の後ろ姿、遠く離れてしまった大切な人々への憧憬である。この抽象化された普遍的なノスタルジーこそが、都会で孤独に生きる人々や日々に追われる現代人の琴線に触れ、時代が変わっても色褪せない感動を生み出している。
単なるセンチメンタリズムではなく、傷ついた心を癒やし、明日からの生活へ再び歩き出すための拠り所。サライという楽曲が持つ本質は、人生という果てしない旅におけるシェルター(避難所)としての役割にある。