なぜテレビや動画配信サービスではなく「ラジオ」なのか。その理由は、視覚を奪わない音声メディアならではの心理的特性にある。長期入院中の患者は、画面を凝視し続けることに疲労を感じやすい。一方で、BGMのように寄り添う音声は、脳への負荷を抑えつつ心地よい刺激を与えてくれる。
医療心理学の研究でも、ラジオ番組を聴取している患者のせん妄発生率が低下し、主観的な痛みの強さが軽減されるというデータが相次いで報告されている。とりわけ、見知らぬ天井を見つめて過ごす夜間の不安感に対し、人間の親しみやすい声が与える安心感は絶大だ。ただ音を流すのではなく、「誰かが自分に向かって語りかけてくれている」という感覚が、病棟特有の孤独感を解消する。