台風が一層し、街に眩しい太陽が射し込んでも、運行情報の画面は「運転見合わせ」の赤文字のままであることが多い。乗客のフラストレーションが最も高まる瞬間だ。しかし、この時間帯こそが保線員や現場スタッフにとって最も危険で過酷な戦場となる。
台風が去った後の線路には、折れた街路樹、飛来したトタン屋根、倒れた飛散防止シートなどが無数に散乱している。さらに長雨による土砂崩れや線路下の路盤流出、飛散した架線の切断など、目視で確認しなければならないチェック項目は数百に及ぶ。保線作業員が徒歩や軌道バイクで全区間を徹底点検し、安全が確認されて初めて「試運転列車」が走る。この泥臭い安全確認の手順をスキップすることは、乗客の命を預かる鉄道事業者として断じて許されないのだ。