西沼田遺跡の最大の魅力は、教科書に載るような政治史ではなく、人々の「生」の手触りがダイレクトに伝わってくる点にある。出土した植物遺体や動植物の残骸の分析からは、彼らの驚くほど豊かな食卓が浮き彫りになった。
主食である米はもちろんのこと、トチノキやクルミなどの堅果類、ウリ類、アズキやササゲといった豆類まで豊富に採取・栽培されていた。また、集落の周辺からは淡水魚の骨や鳥類の骨も発見されており、単一の稲作に依存するのではなく、多様な自然の恵みを組み合わせてリスクを分散させる柔軟な生存戦略をとっていたことが分かる。木製品の加工技術もきわめて高く、用途に応じてスギ、ヒノキ、栗などの樹種を厳密に使い分けていたことも、最新の解析調査から裏付けられている。