函館の代名詞といえば、透き通った身と歯ごたえが自慢の「イカ」だった。しかし、近年の海水温上昇にともなう回遊ルートの変化は、この街のシンボルを根底から揺さぶっている。水揚げ量の減少が続くスルメイカに代わって函館沖で急増しているのが、皮肉にもかつては温暖な海域の魚とされていたブリだ。
場内の水産店を覗くと、以前ならイカ一色だった特設コーナーに、脂の乗った道南産ブリの刺身や漬け丼の看板が堂々と並ぶ。当初は戸惑っていた市場の職人たちも、現在では「函館バリアブル・ブリ」といったブランド化や、独自の熟成技術の開発に本腰を入れている。環境の変化を嘆くのではなく、今獲れる最高の食材を美味しく提供する――その柔軟な商魂こそが、この地で代々受け継がれてきた港町気質そのものだ。