「正気かと思われるかもしれませんが、一杯1200円に上げて初めて、ちゃんとした小麦粉と豚骨を使い続けられる計算になるんです」
高田馬場で20年暖簾を守るベテラン店主は、自嘲気味にそう語る。かつて業界内で絶対的な心理的限界とされていた「1000円の壁」は、2026年から2026年にかけて完全に崩壊した。現在、都内における主要店舗の平均単価は1150円前後に達している。
しかし、価格転嫁に成功した店と、客離れを恐れて据え置いた店との明暗は残酷なほどクッキリ分かれた。ワンコイン価格や800円台を死守しようとした店舗の多くは、採算割れによって静かに姿を消した。消費者の意識も変化している。「高い」と愚痴をこぼして去る客がいる一方で、「本当に美味いなら1500円でも払う」という質の高さを求める層が確実に定着したのだ。