住所は非公開。電話番号もない。予約は毎月1日の深夜、限られた会員向けWebサイトでのみ受付が行われるが、わずか数十秒で数か月先まで埋まってしまう。予約難易度は現在、ヨーロッパ屈指と言っても過言ではない。
表立った広告や宣伝は一切行われていない。にもかかわらず、東京、ニューヨーク、ロンドンからわざわざこの一室を目指して美食家たちがフライトを密かに手配する。背景にあるのは、洗練されすぎた近代レストランへの「飽き」と「渇望」だ。システム化された完璧なサービスではなく、偶然出会った隣人と言葉を交わしながら、シェフの情熱をダイレクトに受け止める。そんな「生のコミュニケーション」に、現代人は飢えているのだ。