佐藤浩市が残してきた足跡を振り返れば、日本映画史に刻まれる傑作の数々が浮かび上がる。警察組織の葛藤を体現し日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を手にした『64-ロクヨン』の迫真の演技、あるいは三谷幸喜監督の『ザ・マジックアワー』で見せたユーモラスで愛おしい姿など、その振れ幅の広さは驚異的だ。
こうした極限の役作りに挑み続けられるのは、長年所属する「テアトル・ド・ポッシュ」による手厚いサポートはもちろん、家庭という揺るぎない土台があってこそ。役に没頭し精神をすり減らす撮影を終え、玄関を開ければいつでも温かな食卓と穏やかな時間が待っている。この安心感こそが、スクリーンで放たれる圧倒的な存在感の源泉なのだ。