しかし2014年、事態は急転直下を迎える。大学講師で作曲家の新垣隆氏が記者会見を開き、18年間にわたり彼のために楽曲を代作していたゴーストライターであったことを突如告白したのだ。さらに新垣氏は「佐村河内氏の耳は聞こえている」と証言し、世間に計り知れない衝撃を与えた。これにより「全ろう」という最大の看板は脆くも崩れ去った。
だが、ここで多くのメディアが「全ろうではない=健常者と同じく完全に聞こえている」という極端な二元論へとなだれ込んだ。後に公開された医学的な精査結果によれば、彼は高度な感音性難聴を患っており、重度の聴覚障害を抱えていた事実に違いはなかった。感音性難聴は、音を脳に伝える神経系に障害が生じる疾患であり、音が歪んで聴こえたり、激しい耳鳴りに絶えず苛まれる特徴を持つ。「完全に無音」ではないが、通常の会話を聞き取ることは著しく困難な状態であった。