尊厳死とは、不治かつ末期の状態に陥った患者が、過剰な延命治療を行わず、人間としての尊厳を保ちながら自然の経過に任せて死を迎えることを指します。生命維持治療によって単に心臓を動かし続けるだけの状態を避け、身体的・精神的な苦痛を最小限に抑える「緩和ケア」を受けながら旅立つ選択肢です。
混同されやすい概念との決定的な違いを整理すると、以下の通りになります。
1. 安楽死(積極的安楽死)との違い
最大の違いは「死期を人為的に早める行為の有無」です。安楽死は耐えがたい激痛から逃れるため、医師が致死薬を投与するなどして積極的に命を絶つ行為を指します。オランダやスイス、カナダなど一部の国では一定条件下で合法化されていますが、日本では刑法上の嘱託殺人罪や承諾殺人罪に問われる違法行為です。一方、尊厳死はいわば「消極的安楽死」の領域に属し、不要な延命措置を行わないことで自然な死を迎え入れる行為であるため、明確に区別されます。
2. 平穏死・自然死との違い
自然死(老衰などによる死)や平穏死は、医療介入を極力行わず、穏やかに衰弱していくプロセス全般を指す広義の表現です。これに対して尊厳死は、人工呼吸器や胃ろうなどの「医療処置を止める・始めない」という明確な本人の自己決定プロセスを伴う点に特徴があります。