内村氏の食事に対するこだわりは有名だった。主食はチョコレート菓子、野菜はほとんど口にしない。一方で、千穂さんが健康を考えて用意した手料理に手をつけず、デリバリーを頼むこともあったという。アスリートとしての極限の自己管理と、一般家庭における「食卓の共有」とのギャップ。これは単なる好き嫌いの問題を超えていた。
「自分が完璧であること」を求める姿勢が、知らず知らずのうちに家族への無言のプレッシャーとなっていた可能性は否定できない。夫婦という最も近い関係だからこそ、言葉にできない歪みが蓄積していったのだろう。互いの「当たり前」がズレたまま、修復の機会を失っていったプロセスがそこにはあった。