生まれ持った遺伝子の影響と、生まれた後の環境要因。この「氏か育ちか」の議論にも、近年のエピジェネティクス(遺伝子発現の制御機構)研究が明確な視点を提供している。遺伝子が描く設計図はあくまで可能性の枠組みに過ぎず、どのスイッチがオンになり、どのスイッチがオフになるかを決めるのは、まさしく3歳頃までの環境刺激そのものである。
過度な放置や慢性的な緊張状態に晒された乳幼児の脳では、ストレス応答に関わる遺伝子のDNAメチル化が進行し、大人になってからのメンタルヘルスの不調を引き起こしやすくなる。言い換えれば、遺伝的なリスクを抱えて生まれてきた子どもであっても、温かな養育環境があればそのスイッチが入るのを防ぐことができるのだ。