テレビ朝日の金曜夜や土曜夕方を彩ってきた数々のアニメーションの中で、ひろしは幾度となく映画史に残る名演を見せてきた。その筆頭が、名作として名高い『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』だろう。自身の足の臭いによって失われた記憶を取り戻し、泥臭く生きてきた自らの半生を肯定する無言の回想シーンは、大人たちの涙腺を崩壊させた。
「俺の人生はつまらなくなんかない!家族のいる幸せを、あんたたちに分けてやりたいくらいだぜ!」という叫びは、虚構のノスタルジーに逃げ込もうとする敵への強烈なカウンターであり、現実を泥臭く生きるすべての人への賛歌だった。
さらに父親としての存在意義を深く抉り出したのが、『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』だ。生身の自分とロボットの自分、二人のひろしが交錯する極限状況で描かれた「家族のために体を張る覚悟」は、多くの観客にアイデンティティの問いを突きつけた。「押しつぶされそうな時、踏ん張るのが父親だ」というセリフに込められた魂の叫びは、世代を超えて語り継がれている。