1908年、わずか3歳で第12代皇帝として即位した愛新覚羅溥儀。だが、200年以上続いた大清帝国の黄昏はすぐそこまで迫っていた。1912年の辛亥革命によって清朝は崩壊。名目上の皇帝の称号と紫禁城での暮らしこそ維持されたものの、広大な城壁の内部は時代のうねりから置き去りにされた浮世離れした異空間に過ぎなかった。
衝撃の転機が訪れたのは1924年だ。軍閥・馮玉祥によるクーデターで溥儀は長年住み慣れた紫禁城を追放される。宮廷の財産を没収され、一瞬にして自らの居場所を奪われた悲劇の君主。この追放劇の裏には、近代化を急ぐ国民政府の政治的策略と、旧時代の象徴を完全に排除しようとする強烈な意志が渦巻いていた。紫禁城の門を出た瞬間から、彼の流転の命運は二度と戻れない不可逆の軌道を描き始める。