自己愛をめぐる学術的な解明は、1世紀以上の歴史を持つ。精神分析の創始者ジークムント・フロイトは、エネルギーが自分自身に向けられる状態を「自己愛」と定義した。彼によれば、発達の過程で他者へと向かうべき愛のベクトルが不全を起こし、自我に固執することが病的な問題へと繋がる。
これに対し、臨床心理学の領域で自己愛の理解を大きく進展させたのがハインツ・コフートである。コフートの「自己心理学」は、肥大化した自己愛の裏側に、驚くほど脆弱で傷つきやすい「自己の核」が存在することを明かした。精神医学の見地からも、彼らが他者を過剰に攻撃するのは、内面にある激しい自己嫌悪や無価値感から逃れるための防衛機制に過ぎない。他者を踏み台にし続けなければ自尊心を保てない構造こそが、悲劇的な結末を引き起こす根本原因である。