ASDの当事者が「仕事が続かない」と悩む背景には、本人の怠慢ではなく、認知特性と従来の職場環境のズレがあります。大人の自閉スペクトラム症における職場トラブルの多くは、以下の3つのパターンに集約されます。
第1に、「曖昧な指示や言葉の裏を読むことへの難しさ」です。「適当にやっておいて」「よしなに調整して」といった指示を受けると、どこまで作業を進めればよいか判断がつきません。旧来のアスペルガー症候群に見られる仕事の特徴として、言語を額面通りに受け取る傾向があり、ニュアンスの解釈違いからミスにつながる事例が頻発します。
第2に、マルチタスクや突発的な予定変更への適応負担です。電話対応をしながら書類を作成したり、急な割り込み業務が入ったりすると、脳内の情報処理が追いつかず強いパニックやフリーズ状態に陥ります。
第3に、感覚過敏によるエネルギーの激しい消耗です。オフィスの電話の着信音、蛍光灯のチラつき、周囲の雑談などが原因で、通常業務以上の極度な疲弊を招きます。周囲から「発達障害だから仕事ができない」と誤解されてしまい、精神的な二次障害を引き起こして退職に追い込まれるケースが少なくありません。