読者に最も強い衝撃を与えた伏線のひとつが、主人公・虎杖悠仁の実の母親が羂索であったという事実です。
虎杖の祖父・倭助が息子である仁に対し「あの女(香織)はやめろ、死ぬぞ」と警告していた回想シーンにおいて、赤ん坊の悠仁を抱く香織の額にはくっきりと縫い目線が刻まれていました。本物の虎杖香織が何らかの理由で命を落とした後、羂索がその遺体に入り込み、仁との間に悠仁をもうけたのです。
羂索が悠仁を生み出した真の目的は、猛毒である宿儺の指を取り込んでも肉体を乗っ取られず、かつ宿儺の魂を逃がさない「完全な器」の製造でした。悠仁の肉体には宿儺の双子の片割れの生まれ変わりである虎杖仁の遺伝子と、羂索による緻密な呪術的処置が組み込まれていました。
そこに母性愛や情愛といった人間的感情は一切存在せず、悠仁はどこまでも冷徹に計算された「千年越しの実験体」として設計された存在でした。しかし、死滅回游の途中で悠仁の同級生である佐々木先輩に対し「息子と仲良くしてくれてありがとう」と告げて立ち去るなど、観察対象の生みの親としての異様な執着を垣間見せる場面もありました。