境内の最深部、崖を背負うように佇む奥の院へ歩みを進めると、気温が一段と下がるのを感じる。ここには、壇ノ浦の合戦を生き延び、やがて不老不死の仙人となったと伝えられる常陸坊海尊が籠もり、民の病苦を救う秘法を修めたという伝説が色濃く残る。
苔むした巨岩の割れ目から滴る水滴が、静寂の境内に澄んだ音を響かせる。海尊が掘り当てたとされるその湧水は、干ばつの年でも枯れたことがない。常陸坊海尊の霊力がいまもこの清流に宿り、人々の痛みを洗い流していると信じられている所以だ。岩肌に手を触れ、目を閉じて祈りを捧げる人々の横顔には、時代を超えた祈りの重みが宿っていた。