天突を適切に刺激すると、なぜ瞬時に呼吸が楽になり、咳の発作が治まるのでしょうか。その背景には、呼吸器系と自律神経系への多角的な生理作用が存在します。
咳止めツボとしての天突は、気管周囲の平滑筋の過度な収縮を緩める働きを持っています。冷気やハウスダスト、ウイルス感染後の気道過敏によって引き起こされる突発的な咳に対し、局所の血流を促して気道粘膜の緊張を解きほぐします。さらに、横隔膜を支配する神経ネットワークにも作用するため、頑固なしゃっくりを止めるツボとしても知られています。
また、臨床現場で特に注目されているのが、精神的ストレスや不安が原因で起こる喉の違和感(ヒステリー球・咽喉頭異常感症)に対するアプローチです。自律神経のうち交感神経が極度に優位になると、咽喉部の筋肉が硬直して「喉に異物が引っかかっている」「息が吸い込みにくい」といった強い不快感が生じます。天突へのマイルドな刺激は、副交感神経を優位に導く自律神経の調整スイッチとして機能し、喉の緊張を急速に解放します。