織田の描く物語がなぜこれほどまでに観客の胸をえぐるのか。その原点は、キャリア初期に手がけていた一連のドキュメンタリー作品にある。かつてカメラ1台を抱えて被災地や過疎地の現場に潜入し、市井の人々の喜怒哀楽を記録し続けた泥臭い取材活動だ。
虚構のドラマであっても、根底に流れるのは徹底した現実の観察である。台本に書かれた言葉の行間から溢れ出る人間の滑稽さや哀愁。飾られた演技ではなく、登場人物が本当にその場で息づいているかのような錯覚を覚えさせる技法は、ドキュメンタリー現場で磨かれた鋭い洞察力の賜物と言える。