画面上では自由奔放に見えるひとみおばあちゃんだが、セットの裏側では緻密な準備が行われていた。秘蔵エピソードとして今も語り継がれているのが、志村の小道具や衣装に対する異常なまでのこだわりだ。
腰の曲がり具合をリアルに見せるための補正用衣装や、トレードマークである眼鏡の位置、さらには「ハヒフヘホ」という独特の発声に至るまで、本番直前まで微調整が繰り返された。メイクにかける時間は一時間を超えることも珍しくなかったという。
「人を笑わせることは、最も真面目な仕事だ」――志村の持論を体現するかのように、現場には常にピンと張り詰めた緊張感が漂っていた。妥協を許さないプロフェッショナリズムがあったからこそ、何十年経っても色あせない名場面が生み出されたのだ。