柄本明といえば、シリアスな映画から異色の舞台まで変幻自在に演じ分ける日本屈指の怪優である。そんな彼がなぜ、バラエティ番組のコントにこれほどまで情熱を注ぎ込んだのか。その答えは、彼が抱いていた志村けんという喜劇人への底知れぬ敬意にある。
「志村さんの笑いは、緻密に計算された音楽だ」。かつて柄本はそう語っていた。言葉のトーン、首の角度、視線の泳がせ方一つで空気を一変させる志村の技量。劇団の主宰として舞台の「間」を追求し続けてきた柄本にとって、志村の作るコントは単なるバラエティではなく、極めて高度な演劇的実験の場に他ならなかったのだ。