近年、HBOやNetflixなどの世界的配信プラットフォームが手がけるドラマシリーズにおいても、単純な勧善懲悪を排した複雑な人間ドラマが大きな反響を呼んでいる。現代のエンターテインメント産業を牽引する大ヒット作の多くは、登場人物それぞれの「譲れない正義」が複雑に交錯する構図を採用している。
視聴者は、ある場面では主人公の主張に共感し、別の場面では対立する相手の正当性にうなずくことになる。完璧な善人も完璧な悪人も存在しない。互いのゆがんだ使命感が激突した結果生まれる人間模様こそが、最上級の心理サスペンスとして視聴者の心を掴んで離さないのだ。
エンタメ作品が問いかける「真の正しさとは何か」という問いは、多様化が進む現代社会を生きる私たち一人ひとりへの痛烈な問い直しでもある。