1980年代、戸塚ヨットスクール事件は社会問題の頂点にあった。訓練生への過酷な体罰による死亡事件や行方不明事件が相次ぎ、校長の戸塚宏をはじめとする関係者が逮捕された。この重苦しい歴史が、インターネットの普及とともに徐々に形を変えていく。特に5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の「なんJ」板では、過激なキャラクターや強烈なフレーズが好まれる傾向があり、同スクールの極端な指導方針が格好のネタとして発掘されてしまった。
かつての悲劇を知らない世代にとって、それは教科書の中の出来事、あるいはフィクションと同義なのかもしれない。凄惨な事実から文脈が剥ぎ取られ、ただの「面白いフレーズ」としてタイムラインを流れていく。この脱文脈化こそが、ネットミームが持つ最大の毒性であり、同時に拡散力の源泉でもある。