彼女の女優キャリアを語る上で絶対に外せない作品が、三島由紀夫の原作を映画化した『潮騒』だ。伊勢湾に浮かぶ神島を舞台に描かれた純愛物語で、彼女はヒロインの初江役を見事に演じ切った。相手役を務めたのは、当時デビュー間もない新人だった宝田明である。
過酷なロケーション撮影の中で、二人のみずみずしい演技は奇跡的な化学反応を起こした。潮風に洗われたような透明感と、内に秘めた情熱。特に、焚火を挟んで二人が向かい合う名シーンでの演技は、日本の文芸映画史に刻まれる屈指の名場面として語り継がれている。
撮影現場での二人は、役柄同様に互いを尊重し合い、切磋琢磨する良きパートナーだった。宝田明の力強さと、彼女の繊細で凛とした佇まいが絶妙なコントラストを生み出し、映画は大ヒットを記録。昭和映画の文芸作品における一つの到達点となった。