館内に入ると、ひんやりとした空気と共に古いパイプ椅子と木床の香りが鼻腔をくすぐる。全席自由席。立ち見も珍しくない。最新のサラウンドシステムとは程遠い、どこか乾いた音響がスピーカーから響き渡るが、それがかえってスクリーンの映像に異様な臨場感を与える。
上映されるのは名画の2本立てや、コアなB級映画、そして成人向け作品まで多岐にわたる。映画をただ情報として摂取するのではなく、暗闇の中で見知らぬ他者と肩を寄せ合い、同じスクリーンの明滅を眺める。そこには、完璧に管理された現代のエンタメ空間では決して味わえない、どこか背徳的で愛おしい没入感が満ちている。