日本のテレビドラマ界を語る上で欠かせないのが、大映テレビが制作しTBSテレビ系列で放送されて空前のヒットを記録した「赤いシリーズ」だ。中でも『赤い疑惑』で主演の山口百恵演じるヒロインを慈愛に満ちた眼差しで支える父親役は、今なお語り継がれる彼の代名詞となっている。
現場での彼は、実の娘のように山口百恵を温かく包み込んだという。連日の猛烈なハードスケジュールの中、十代半ばだった彼女が疲労で倒れそうになると、自ら進んで声をかけ、時にはスタジオの隅で芝居の相談に乗っていた。ドラマの設定を超えた本物の絆が画面越しに滲み出ていたからこそ、あの感涙の物語は日本中の視聴者の心を震わせたのだ。
当時の撮影現場を知る関係者は明かす。「宇津井さんは一切の妥協を許さない人でした。NGを出さないことで有名で、どれほどセリフが多くても完璧に頭に入れてスタジオ入りする。その背中を見せることで、若い出演者たちの引き締まった緊張感を引き出していたのです」。妥協なきプロ意識と深い愛情。それが、過酷な制作現場を奇跡的な名作へと昇華させる原動力だった。