戦後の歓楽街を語る上で欠かせないのが、「赤線」と「青線」の厳然たる区別だ。両者を隔てていたのは、行政による管理と警察の「公認・黙認」の有無であった。
赤線区域は、衛生管理の名目のもとで女性たちに定期的な性病検診が義務付けられ、鑑札を持った業者が税金を納めながら半ば公然と営業していた。いわば国家が管理権を維持し続けた「公認特区」である。これに対して青線は、警察の地図上に青い線で囲まれた違法営業地域、あるいは青線指定すらされていない闇営業の飲食街を指した。
もぐりの酒場、連れ込み宿、路地裏の小料理屋。青線では警察の摘発に怯えながら、暴力団や地下組織の介在のもとで無許可の営業が横行していた。検診の義務がない青線は性病感染の温床とも目され、赤線の業者たちは自らの特権を守るため、青線を厳しく取り締まるよう警察に陳情を繰り返すという皮肉な対立構造も生み出された。