猛吹雪に見舞われた帝都・東京。約1,500名の下士官・兵を率いた青年将校たちは、首相官邸や蔵相私邸など政治の中枢を電撃的に襲撃した。高橋是清大蔵大臣をはじめ、国家の舵取りを担う重要人物たちが次々と命を落とす惨劇が繰り広げられた。彼らは農村の深刻な困窮や政治腐敗の打破を掲げ、「昭和維新」の断行を強力に迫ったのである。
しかし、近年の歴史研究によって解明が進む陸軍関係者の極秘日記や憲兵隊の秘匿文書は、単なる理想主義者の過激行動とは異なる影を浮かび上がらせている。クーデター成功後に画策されていた暫定閣僚案や、裏で手綱を引こうとしていた軍上層部の密約が浮き彫りとなった。暗殺劇の裏側に潜むのは、国家の権力構造を根底から塗り替えようとした綿密な政治的企図だった。