80年代の不良カルチャーが全国津々浦々の一般中高生にまで浸透した背景には、当時の出版業界と映画メディアが果たした巨大な役割があります。その頂点に君臨したのが、1983年に『週刊ヤングマガジン』で連載を開始したきうちかずひろ氏の『BE-BOP-HIGHSCHOOL(ビーバップ・ハイスクール)』でした。
それまでの劇画調で非現実的な「番長漫画」とは一線を画し、等身大の不良高校生であるヒロシとトオルの日常、リアルな喧嘩の駆け引き、独特のユーモアとスラングを克明に描いた同作は若者のバイブルとなりました。東映による実写映画シリーズ(仲村トオル・清水宏次朗主演)は記録的な大ヒットとなり、劇中のセリフ回しや仕草、変形学生服の着こなしを全国の中高生が一斉に模倣するという社会現象を引き起こしました。
さらに、『湘南爆走族』『今日から俺は!!』『ろくでなしBLUES』といった昭和のヤンキー漫画名作が次々とヒットを飛ばし、不良カルチャーは「ダサいもの」から「カッコよくて面白い青春の1ページ」へと大衆化されていきました。メディアが不良の生態をエンターテインメントとして消費可能にしたことで、現実の不良少年たちも自らのアイデンティティを漫画の登場人物に重ね合わせ、美学を洗練させていくという相互フィードバックが成立していたのです。