日本の出版界および表現の歴史において、最大の転換点となったのが1991年です。それまで厳格なタブーとされていた表現の壁を打ち破ったのが、写真家・篠山紀信が撮影を手掛けた樋口可南子の写真集『Water Fruit』、そして社会現象と化した宮沢りえの『Santa Fe』でした。
当時、トップアイドルとして絶大な人気を誇っていた宮沢りえが18歳で発売した『Santa Fe』は、累計発行部数150万部以上という空前絶後のメガヒットを記録。写真集の歴代売上ランキングにおいて、現在に至るまで破られていない金字塔です。この作品の誕生には、篠山紀信が仕掛けた緻密な美学と、宮沢本人の恐れを知らない表現意欲が結晶化したという秘話が残されています。アメリカ・ニューメキシコ州の乾いた大地を背景に、無垢な肉体と光と影が見事に調和したビジュアルは、従来のグラビアの枠組みを根底から覆しました。
『Santa Fe』の大ヒットを契機に、当時の世間では賛否両論の嵐が吹き荒れました。国会やワイドショーでも表現の自由と猥褻性の境界について大激論が交わされたものの、結果として日本のビジュアル表現における大きな規制緩和へとつながっていきます。その後、高岡早紀、川島なお美、葉月里緒奈といったトップ女優たちが続々と本格的な写真集を刊行し、1990年代はまさに女優写真集の黄金時代を築き上げました。