早明浦ダム過去の渇水記録と真相を語る上で、避けて通れないのが1994年(平成6年)の大渇水、いわゆる「平成の砂漠化」と称された未曾有の災害です。この年、列島を襲った記録的猛暑と空梅雨により、早明浦ダムの貯水率は7月下旬から急速に低下し、8月15日にはついに「貯水率0%」を記録しました。
当時、香川県高松市をはじめとする主要都市では、最大1日19時間におよぶ夜間断水が約2か月にわたって実施されました。当時の特番インタビューや報道各社の現地手記には、「蛇口をひねってもシューという空気の音しかしない」「深夜に給水ポリタンクを抱えて給水車に並ぶ市民の疲弊しきった顔」が生々しく記録されています。飲食店では食器の上にラップを敷いて洗い物の水を節約し、讃岐うどん店が茹で麺用の水を確保できずに臨時休業へと追い込まれるなど、地域経済そのものがマヒ状態に陥りました。
さらに2005年(平成17年)や2008年(平成20年)にも、早明浦ダムは再び貯水率0%の淵に立たされました。2005年の渇水では、真夏の8月下旬に貯水率が完全に0%まで落ち込んだ直後、9月上旬に来襲した台風14号の大豪雨によって、わずか数十時間でダムが一気に満水(貯水率100%)に復旧し、今度は一転して緊急放流を行うという極端な気候の暴威を見せつけました。この劇的な反転劇は、早明浦ダムの集水域がいかに台風・豪雨という不安定な天候要因に生殺与奪の権を握られているかを如実に証明しています。