インターネット上のマナー記事や知恵袋などで時折見られる「『行かれる』は敬語として間違いである」「二重敬語だから使ってはいけない」という言説がありますが、これは明確な誤解です。
「行く」という本動詞に尊敬の助動詞「れる」を付けた「行かれる」は、文法的に正しい標準的な尊敬語です。二重敬語とは、1つの動詞に対して「お(ご)〜になる」と「〜れる/られる」など、同じ種類の敬語を重ねてしまう現象(例:「お行きになられる」「お越しになられる」)を指します。
ただし、「行かれる」には文法的に正しい一方で、実務上の2つの大きな盲点が存在します。
① 受身・可能表現との同音衝突:
日本語の「れる」には、「尊敬」だけでなく「受身(雨に降られる等)」や「可能(行ける等)」の意味があります。「あそこへ行かれますか?」という一文は、文脈によって「行くことができますか?(可能)」とも受け取れるため、曖昧さが生じるリスクを孕んでいます。
② 敬意の軽さによる物足りなさ:
助動詞「れる/られる」による尊敬表現は、敬語体系の中では最も敬意が軽い部類に入ります。社外の重要なクライアントやVIPに対して「行かれますか」を用いると、人によっては「少しフランクすぎる」「敬意が足りない」と受け止められる場合があります。
そのため、社外取引先や役員に対しては「いらっしゃる」「おいでになる」を選択するのが最も安全で洗練された選択肢です。