冷戦下の軍拡競争は、科学者たちの判断力すら曇らせる異例の事態を引き起こした。当時、アメリカ国防総省やCIA(アメリカ中央情報局)は、ソビエト連邦の超能力研究に対抗するため、極秘プロジェクト「スターゲイト計画」を立ち上げた。その中心的な研究拠点となったのが、名門スタンフォード研究所である。ここでユリ・ゲラーに対する一連の「科学的実験」が行われた。
当時の研究者たちは、ゲラーが密閉された容器内のサイコロの目を当てたり、遮蔽された部屋で描かれた図形を言い当てたりしたことに対し、「本物の超能力である」とする報告書を作成した。しかし、後に暴露されたプロトコルの杜撰さは驚くべきものだった。ゲラーは実験中に壁の覗き穴を利用したり、研究員の隙を突いて情報を盗み見たりすることが可能な環境に置かれていたのだ。国家の安全保障を背負った精鋭の科学者たちが、手品師の基本的なトリックを見破れず、軍事資金を投じて幻影を追い求めていた事実は、冷戦期の狂気を象徴するエピソードとして語り継がれている。