名門・玉ノ井部屋を率いるのは、現役時代に幕内最高優勝3度を誇り、技量と闘志でファンを魅了した元大関・栃東大裕だ。現役引退後、師匠として部屋を継承した彼を一番近くで支え続けてきたのが、ほかでもないおかみさんである。怪我や病気との闘い、部屋の運営という重圧を背負う師匠の背中を、彼女は常に静かな覚悟で見守り続けてきた。
密着取材で見えてくるのは、決して表舞台には出ない過酷な舞台裏だ。早朝から深夜まで休む暇なく動き回り、30人近くに及ぶ部屋の家族全員の体調や表情の変化に目を光らせる。時には厳しい母として叱咤し、時には優しい姉のように悩みに耳を傾ける。その奮闘ぶりは、単なる「陰の立役者」という言葉だけでは語りきれない熱量に満ちている。