本作を手掛けたのは、かつて石井聰亙の名で日本映画界に衝撃を与え、現在は石井岳龍として精力的な活動を続ける映画界の鬼才である。80年代初頭、若者の破壊的衝動を極限まで加速させた『狂い咲きサンダーロード』や、家庭崩壊をブラックユーモア交じりに描き狂乱を巻き起こした『逆噴射家族』によって、彼は一躍時代の寵児となった。
元々はピアフィルムフェスティバル(PFF)といった自主映画の登竜門から躍進し、従来の日本映画業界の枠組みを根底から打ち破ってきた背景を持つ。巨大な製作費やメジャー資本の論理に屈せず、圧倒的な個人作家のヴィジョンを貫く姿勢は、日本のインディーズ映画の歴史において金字塔と呼ぶにふさわしい。石井監督が本作で試みたのは、従来のドラマツルギーを破壊し、感覚そのものを映画化するという途方もない実験だった。