ファンの間で長年議論されてきた噂の一つに、「フォークの神様でありながら、1試合にフォークを5〜6球程度しか投げなかった」という説があります。この噂の真相について検証してみましょう。
結論から言えば、この話は紛れもない事実です。杉下本人が晩年のテレビ特番やトークイベント、自著『変化球人生』などで率直に認めています。
「フォークボールというのは、指の力と腕の振りに凄まじい負担がかかる球種。毎イニング投げていたら腕が壊れてしまう。それに、滅多に投げないからこそ相手打者は直球を待ちながらも頭の片隅でフォークを警戒し、勝手に手元でボールを迷ってくれる」と杉下は語っていました。
つまり、杉下のフォークボールは単なる空振りを奪うためのウイニングショットではなく、「相手の打撃フォームを崩し、直球をより速く見せるための心理的兵器」だったのです。9回を通じて投げるのは、満塁のピンチや相手クリーンナップを迎えた勝負どころのわずか数球。打者は「いつ落ちる球が来るか」という恐怖心からストレートに差し込まれ、凡打の山を築くことになりました。この計算し尽くされたマウンド心理術こそが、杉下の真の強さだったと言えます。