そして、キャリアの集大成として映画史に深く刻まれたのが遺作となった『大鹿村騒動記』である。長野県大鹿村に伝わる伝統の村歌舞伎をモチーフにしたこの作品で、彼は企画段階から深く携わり、作品への並々ならぬ情熱を傾けた。
実は当時、彼は病魔と密かに戦いながら撮影に臨んでいた。体調の限界を迎えつつも、カメラが回れば一切の衰えを感じさせない圧倒的な気迫で現場を牽引。共演者やスタッフを温かく包み込み、村の人々と笑顔で交流を重ねた裏話は、彼の人間的な温もりを証明している。最後の最後までスクリーンに命を燃やし尽くしたその姿は、一人の役者が全人生をかけた究極のラストパフォーマンスだった。