1980年10月5日、日本武道館引退コンサートのステージ中央にマイクを静かに置き、表舞台から完全に姿を消した山口百恵さん。トップスターとしての輝かしいキャリアに自ら終止符を打ち、俳優の三浦友和さんとの結婚生活をスタートさせた彼女が、のちに人生の新たな情熱を見出したのが布の芸術だった。
家庭を温かく育む傍ら、彼女はキルト作家の鷲沢玲子氏に師事。針を一目ずつ運ぶ地道な手作業の世界へと没頭していく。かつてスポットライトを浴びていた歌姫は、静かなアトリエで布地の組み合わせや色使いを探求し、着実にその才能を開花させていった。