現在、東京でお台場を拠点に人気を博しているマダム・タッソー東京。あちらがハリウッドセレブや現代のポップスター、アスリートを配し、体験型エンターテインメント産業の最前線を行く「明るく開かれたメジャーな場」であるならば、東京タワーにあった伝説の蝋人形館はどこまでも「暗く濃密なアングラ空間」だった。
マダム・タッソーでは来場者が人形と自由にツーショット写真を撮影し、SNSに投稿して楽しむのが一般的だ。一方、かつてのタワーの館内は、どこか触れてはいけないものに触れているような静寂と緊張感が漂っていた。観客と展示物との間に流れる独特の間合。この文化的な対立軸こそが、今なお旧蝋人形館をノスタルジーとともに語らせる理由なのだ。