今回、厨房の奥深くへの独占取材が特別に許可された。そこで目撃したのは、ミリ単位の包丁さばきと、秒単位で温度をコントロールする職人たちの鬼気迫る姿だ。料理長が語るこだわりは明快そのものである。「奇をてらうのではなく、食材の声を聞く。それだけです」。その言葉を象徴するのが、限られた常連と幸運な予約者だけに振る舞われる今期の限定メニューだ。
市場には滅多に出回らない幻の銘柄牛と、朝掘りの極上筍を組み合わせた椀物は、まさに伝統と革新が交差する逸品。昆布水に浸す時間、削り節を投入する瞬間の火加減まで厳密に計算され尽くしている。一口含むだけで幾重にも重なる旨味が広がり、言葉を失う。予約殺到の理由は、この一切の手抜きを排除した愚直なまでのクラフトマンシップにある。